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印鑑証明や印鑑登録は複数登録できますか?

印鑑登録は結婚や離婚したりなどで名前が変わったり、実家を離れて一人ぐらしをするようになったりすると、その都度、印鑑登録をし直す必要があります。

では、市や町をまたいだり、県や都をまたいで複数登録することはできないのでしょうか?

もし、複数登録することができれば、引っ越したりする度に登録する必要もなく、利便性も高くなるし、楽なんだけど・・という方もいるかもしれません。

しかし、結論から言えば、印鑑登録を複数行うことはできません。

今回はその理由について探ってみたいと思います。

印鑑登録は市区町村長が認める本人確認制度の仕組み

現在の印鑑登録の制度は、「平成16年 印鑑の登録および証明に関する事務について」(参考資料/PDF)という通知にあるように、各市区町村の長に印鑑登録の申請に関する事項を委ねています。

つまり、印鑑登録は日本という国ではなく、各市区町村の長が認める形となり、各自が市区町村役場で手続きを行うという形になっています。

印鑑登録から印鑑証明書の発行までを国が行うことになれば、国が本人の印鑑であることを認めてくれますので、引っ越す度に印鑑登録をする必要がなくなるかもしれませんが、現状では、市区町村役場がその業務を引き受けているという形になっていますので、何か変更の必要ある度に、印鑑を登録をし直すということが必要になっています。

そして、印鑑登録及び印鑑証明書は、まぎれもなく申請した本人であることを市区町村長が認めるということになりますので、なりすましなどは決して許されないという理由から、一人一本までしか印鑑を登録することができません。

印鑑登録が一人一本は本人のため?!

現状、印鑑証明書と実印による押印が求められる場合といえば、不動産の登記、自動車の登録、転職、賃貸への入居、公正証書の作成などで極めて、重要な契約や取引になることが多いです。

それは、取引する双方が、契約する際に、紛れもない本人であることを確認するために利用されています。場合によっては連帯保証人の印鑑証明書と実印による押印が求められるケースもあります。

なぜ、そこまでして本人確認が必要なのでしょうか?

それは、契約の後になって、「あの印鑑を押したのは私じゃない」「そんな契約をした覚えはない」「自分が知らないところで行われたことだ」といった係争を未然に防ぎたいためです。

不動産登記を例に取れば、法務局(正確には支局と登記所)が、売主の印鑑証明書の提出と実印による押印を求めて、売主の本人確認と意思確認を行って、「本当に売ってもいいんですね?」ということに対して、承諾をもらうという形になっています。

そして、仮に印鑑登録が複数認められていたとすると、自分が知らないところで、何者かが複数登録してあるうちの一本を利用して、勝手に所有している不動産を売ってしまうようなことが起こってしまい、大混乱に陥ってしまいます。

つまり、印鑑の複数登録を認めてしまうと、自分にもその分だけ、なりすましのリスクが増えるということになります。

一人一本までという現行の印鑑登録の仕組みは、登録者本人のためでもあるということがお分かりいただけるかと思います。

法人の印鑑登録でも複数登録はできない?

法人の印鑑登録は、登録先が法務局になるのですが、これも個人の場合と理由は同じで、複数登録はできません。

法人の場合も、登録された印鑑はいわゆる実印と呼ばれ、紛れもない法人が登録した印鑑で、そして、それを認めるのが法務局である以上、なりすましなどは許されません。

仮に印鑑登録を複数登録することが可能だとすると、そのうちの一本が何者かの手によって、勝手に不条理な契約を結ばれたりして、その契約の有効性そのものが疑われることが度々起こったり、裁判で争いが絶えなかったり、そもそも安心して商取引ができなくなってしまいます。

例えば、個人という視点で考えても、ある不動産会社から、土地を買ったり、家を買ったりする場合に、契約相手である法人の印鑑証明書や実印による押印が、本当かどうかを確かめなくてはいけない世の中だと、面倒な手間がこれまで以上にかかり、取引相手を簡単に信頼できない、非効率な社会になってしまうのはすぐにお分かり頂けるかと思います。

まとめ

「印鑑証明や印鑑登録は複数登録できますか?」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか?

印鑑登録の根本にある、本人確認の仕組みは、法人にとっても、個人にとっても、安心して取引ができるための社会の仕組みとして機能していることがお分かり頂けたのではないかと思います。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

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【筆者プロフィール】

浅井美津子

保有資格である宅地建物取引士(免許番号:941700070)・簿記1級・販売士1級を活かし、長年にわたり、不動産、自動車などの売買契約業務から会計業務まで幅広く従事。社会問題から生活に関わる話題などについて、独自の視点で執筆活動も行っています。