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不動産の売買契約と実印及び印鑑証明書について

不動産の売買契約に際して、売り主及び買い主が実印と印鑑証明書が必要・不必要になる背景について説明していきたいと思います。

まずは、下記のイメージをご覧ください。

不動産の売買契約と実印及び印鑑証明書について

図は説明するにあたり、わかりやすく簡略化しておりまして、この他に不動産会社やローンがある場合は、金融機関・ローン会社、司法書士、宅地建物取引主任などが不動産の売買契約に関わってきます。

今回は、不動産の売買契約と実印及び印鑑証明書について焦点を絞って説明するために省略しています。

では、見ていきましょう。

売主だけ実印と印鑑証明書が必要?

現行の日本の法律では、契約書の作成およびその効力の担保において、印鑑は必要ありません。自分の手で書いた自署、つまりサインで問題ありません。

しかしながら、日本の商習慣ではそうなっておらず、本人の意識確認のために、認印や銀行印、そして実印が利用されています。

とりわけ、多額の金銭が発生することが多い不動産の売買契約においては、売主の実印と印鑑証明書の提出が必要になっているというのが現状です。

誰が必要としているのでしょうか?

答えは役所です。この場合は、法務局ですね。

なぜなら、不動産の売買を通じて、所有権の移転登記が行われ、そしてその後に、仮に売主が「私は売ったつもりはありません」と言い始めたら、どうなるでしょうか?

行き着くところは、「売ってない、買った」という係争案件になるということです。

そうしたことを未然に防ぐために、法務局は、売主が本当に売ることを自らの意思で同意しているのかということを確認するために、実印による押印と印鑑証明書の提出を求めているというわけです。

つまり、実印と印鑑証明書という第3者機関である市区町村役場に手間と時間と費用をかけて行った本人確認のシステムを利用しているというわけです。

これは逆に考えれば、仮に誰かが売り主になりすまして、売り主の土地や家屋、マンションといった不動産を勝手に売買するのを防いでいるという風にも考えることができます。

であるからこそ、売主は自分の実印と印鑑証明書は大切に管理する必要があるというわけですね。

買主は実印と印鑑証明書が原則、不要・・しかし

不動産の売買契約における所有権の移転登記について、不動産登記規則第47条に規定がありまして、買主は実印による押印や印鑑証明書の提出は求められていません。

買い手側は、お金を支払って、不動産を取得するわけですから、なりすましの必要性が乏しいという背景を考えてみますと当然と言えるかもしれません。

しかし、幾つか例外がありますので、そちらについて説明したいと思います。

買主がローン契約をする場合は実印と印鑑証明書が必要

不動産の売買契約において、買主が実印による押印と印鑑証明書が必要になる場面としては、ローン契約があります。

この場合の、リスクの担保者は購入代金を融資する金融機関のローン会社となります。

仮に、買い手が何者かになりすまして、ローン契約を結んだ場合、その未払リスクを抱えるのはローン会社です。

ですから、ローン会社は本人確認のために、買主の実印と印鑑証明書の提出を求めることになります。

なお、通常、不動産の売買契約では、連帯保証人をつけますが、その場合は、連帯保証人の実印と印鑑証明書も必要になります。

買主が代理人を立てて契約する場合は実印と印鑑証明書が必要

買主が海外在住だったり、健康上の理由から売買契約に立ち会えない場合は、買主が代理人を立てて、不動産の売買契約を行うことがあります。

その場合は、代理人への委任状と委任状への実印の押印、そして印鑑証明書の提出が必要になることが多いです。

これは、不動産の売買契約において、買主の存在を担保するために活用されるといった形になります。

なお、この場合は、代理人も実印と印鑑証明書の提出が必要になります。

不動産の売買契約には、買主はどの印鑑を使えばいい?

これについては、様々な考え方があると思います。

実際のところ、ローン契約や代理人がいなければ、契約書には認印でも問題ないように思えます。

しかしながら、登記識別情報(参考:wikipedia)の書面による申請には、規則68条7項ないし13項の規定が準用され、押印が必要になっているのですが、その際の本人確認の方法として、契約書に認印を使用しているというのは、なりすましリスクがあるのではというのが筆者の考えです。

登記識別情報の閲覧制度そのものに関する議論はここでは避けますが、不動産という多額の金銭が絡む公的書類の交付申請において実印を利用しておいた方が、契約書と申請者が本人であり、同一人物であることを担保できる蓋然性が高く、万が一のトラブル予防になるのでは・・というのが筆者の見解です。

買主の意思確認

現在の日本の商習慣においては、実印と印鑑証明書のセットは本人確認と本人の意思確認と担保する方法としては、最も活用されている方法です。

最終的には、買主の判断にゆだねられますが、そうした背景を鑑みますと、多額の金銭が絡む商取引で実印と印鑑証明書を活用することで、紛れもなく本人の意思で行っているということを証明するためには、実印を利用したほうがいいと思います。

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まとめ

「不動産の売買契約と実印及び印鑑証明書について」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

読者の方の少しでもお役にたてれば、幸いです。

最後まで、お読みいただきまして、ありがとうございました。

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【筆者プロフィール】

浅井美津子

保有資格である宅地建物取引士(免許番号:941700070)・簿記1級・販売士1級を活かし、長年にわたり、不動産、自動車などの売買契約業務から会計業務まで幅広く従事。社会問題から生活に関わる話題などについて、独自の視点で執筆活動も行っています。