トップページ > 印鑑購入についてのまとめ > 個人事業主・自営業者・フリーランスが開業するにあたって必要な印鑑の種類とは?

個人事業主・自営業者・フリーランスが開業するにあたって必要な印鑑の種類とは?

Web制作・エンジニア・ライター・デザイナー・IT・カメラマン・士業など、日本国内だけで240万人以上の人が職業としている個人事業主(別名:フリーランス・自営業者)

その規模は全事業者の中の約57.6%を占めておりまして、国内では最も大きな事業主体となっています。

soho

データ出所/中小企業白書2013年のデータをもとに当サイトにて加工

今回は、そんな国内最大数を誇る個人事業主が開業するにあたって必要となる印鑑の種類について、説明していきたいと思います。

本記事の見出しは下記の通りとなっています。

見出し内容
個人事業主・フリーランス・自営業者に必要な印鑑の種類とは?詳細へ
開業届や確定申告の印鑑はゴム印以外なら個人用の認印でOK詳細へ
ビジネス用の丸印=「代表印」は必須ではない詳細へ
個人事業主用の銀行印が今後は必要なくなる理由詳細へ
ビジネス用の角印こそ最も出番が多い詳細へ
請求書も見積書もネットの時代で「電子印鑑」が主流?詳細へ
個人用の印鑑との併用について詳細へ
個人としての実印及び印鑑証明書の管理は厳重に詳細へ

では、早速、順番に見ていきましょう。

個人事業主・フリーランス・自営業者に必要な印鑑の種類とは?

まず、個人事業主(別名:フリーランス・自営業者)がこれまで”一般的に”必要とされてきた印鑑の種類には、下記のような種類があります。

印鑑の種類分類
丸印ビジネス用
銀行印ビジネス用
角印ビジネス用
ゴム印ビジネス用
実印個人
認印個人

しかし、ご存知の通り、様々なサービスがネットで展開されるのが当たり前となり、また、個人の認証方法についての技術革新が進んだ今、必要とされる印鑑の種類は、実務レベルでは従来に比べて、かなり”少なくなっている”というのが現状です。

そこで、「これから開業の予定だけど、どんな印鑑が必要なのか分からない・・・」という方が、何となく必要そうだからという理由で、不要な印鑑まで”買い過ぎてしまう”ことがないように、本記事をご用意させて頂きました。

なお今回の記事作成にあたっては、フリーランスとして活躍しているwebライターやデザイナー、さらに、当サイトの記事の監修に携わっている会計士、税理士、宅地建物取引主任などの自営業者からの”生の意見”も随所に取り入れました。

下記の記事を参考に、自分にとって必要な印鑑の種類を見極めて頂ければと思います。

開業届や確定申告の印鑑はゴム印以外なら個人用の認印でOK

まず、最初に個人事業主(別名:フリーランス・自営業者)として印鑑が必要となる書類と言えば、開業届ではないでしょうか。

kaigyou

参考/個人事業の開業・廃業等届出書(PDF) -国税庁-

まれに「うちは開業届なんて、出すほどじゃないので・・・」とおっしゃる方がいますが、経費の認められる範囲が広い青色申告をすることを想定されるのであれば、開業届を出しておいた方が納税面でお得なことは疑いようがありません。

ちなみに、開業届の提出先は拠点となる住所の税務署になります。

そして、結論から先に申し上げますと、開業届や確定申告、年末調整など税務署などに提出する公的書類への押印は、個人事業主であれば、個人の認印で十分です。

ただし、税務署などに提出する公的書類の印鑑については、ゴム印による押印が一切、認められておりませんので、注意が必要です。

その背景となる考え方には、諸説ありまして、その説の一つとしては、例えばゴム印による押印の場合、保管状態によっては、印影が滲んでしまったりすることで、印影の判読ができなくなる可能性があるというものです。

実際のところ、ゴム印であるシャチハタの印影が滲んだりして、印影の判別がつかなくなる可能性については、シャチハタ社のサイトにあるQ&Aを見る限り、技術的にはその可能性は低いようですが・・・現状ではゴム印による押印は認められておりません。

Q.紙に押した印影の保持期間はどのくらいですか?
A.上質紙などへのなつ印で、ファイルなどでの通常保管(直射日光があたらないなど)であれば20年間は鮮明な印影を保持していることを確認しています。

参考/シャチハタ社-よくあるご質問「紙に押した印影の保持期間はどのくらいですか?」-

また、別の説としては、印鑑登録条例が挙げられます。

印鑑登録の制度は、各都道府県の市区町村単位の条例で定められておりまして、例えば、東京都港区では以下の通り定められております。

第七条 区長は、登録申請に係る印鑑が、次の各号のいずれかに該当する場合は、当該印鑑の登録をすることができない。
三 ゴム印その他の印鑑で変形しやすいもの

参考/港区印鑑条例

開業届や確定申告は税務署への提出書類ですから、厳密に言えば、印鑑登録制度とは関係があるとは考えにくいですが、条例を”援用”するというのは行政機関ではよくある話ですので、こちらの説の方が説得力はあるように感じます。

いずれにしても、現状では開業届や確定申告で押印する印鑑として、ゴム印による押印は一切、認められておりませんので、ご注意ください。

なお、「押印した印影が「ゴム印」かどうかということを役所の担当者が見分けることができるの?」という疑問を持たれる方がいらっしゃるかもしれませんが、役所の担当者は、そういった意味では、膨大な数量の押印された書類を見てきているプロフェッショナルですので、新人でもない限り、ほとんどのケースでゴム印であることを見抜くことができると思います。

また、確定申告に必要な印鑑及び書類などについては、当サイトにて詳しくまとめた記事をご用意しておりますので、興味のある方は「確定申告に必要な印鑑についてのまとめ」の記事も参考にして頂ければと思います。

ビジネス用の丸印=「代表印」は必須ではない

株式会社や合同会社などの法人設立であれば、印鑑届出書で法務局に提出が義務付けられている代表印=法人格としての実印。

しかし、個人事業主の場合、法務局への印鑑届出は義務付けられていないため、例えば、お店の屋号やウェブサイトのサイト名などが入った丸印は、仕事の都合上でどうしても必要ということでもなければ、必要ありません。

対外的に、どうしても作りたいという場合は、下記のような印鑑に。

maruin

例えば、個人事業主の方が、屋号入りの丸印を作るとなると上記のような印鑑を作ることになるかと思いますが、実際のところ、あまり使い道はないというのがほとんどのケースではないでしょうか?

では、「契約書などへの押印はどうするの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

契約書への印鑑は、重要なものであればあるほど、実務的には、代表者の実印と印鑑証明書をセットで求められることが多く、そうなりますと、個人事業主の場合、法人格はありませんので、実印と印鑑証明書が求められた場合は、個人としての実印と印鑑証明書を提出するということになります。

個人としての実印と印鑑証明書について詳しく知りたいという方は、当サイトにてそれぞれ詳しく記事をまとめておりますので、参考にして頂ければと思います。

参考/実印ってそもそも何?登録方法から使い方まで徹底解説!

参考/印鑑登録証明書の取り方・取得の方法

では、「覚書などの書類の場合は?」という疑問もあるかと思います。

契約書ほどの重要性がない書類への押印については、個人の認印で十分でしょう。

つまり、ビジネス用の丸印=「代表印」は、必須ではないということがお分かり頂けるかと思います。

では、続いて銀行印について見ていきましょう。

個人事業主用の銀行印が今後は必要なくなる理由

まず、個人事業主として”個人名義”で銀行の口座を開設するというのは、シンプルに個人名義の銀行口座を開設するということですので、審査も含めて、ハードルはそれほど高くない上に、近年は、大手銀行を中心に、印鑑無しの指紋認証やサイン認証などに切り替わりはじめていますので、銀行印そのものが必要なくなりつつあります。

今後もこの流れが加速することはあっても、逆戻りするというのは考えにくいので、今後は個人事業主にとっては、会社用としても、個人用としても、「銀行印」が必要なくなっていくということは間違いなさそうです。

参考/銀行印廃止に舵を切る大手銀行の本人確認システムのまとめ

そして、屋号名義での銀行口座開設ですが、法人格はないのに、あたかも”法人”のように口座を作ろうとする、非常に”あいまい”なアクションで、一昔前までは、比較的、口座開設も容易にできましたが、現在は、銀行側での、”架空口座”への対策や口座管理コストの削減などの背景から、審査が厳しくなっている銀行もあり、銀行によっては屋号による口座開設のハードルは決して低くありません。

また、屋号としての口座がどうしても必要というのであれば別として、屋号用の口座を作るということは、そのための銀行印を用意する必要がありますし、また、申告などの対策として、個人用の印鑑とは別の屋号用の銀行印を用意する必要があります・・・。

bank

仮に、屋号用の銀行印を作るとなると、上記のような印鑑に。

そうした管理の手間やコストなどを考えますと、屋号用の口座開設をするというのは、あまりおすすめできないというのが筆者の見解です。

世の中には、個人事業主でスタートして、売り上げが拡大し、法人成りした現在も個人事業主時代に作った個人名義の銀行口座をそのまま申告時に使用している会社もありますが、税務処理上、それが問題視されるというケースはありません。(弊社提携の税理士にも確認済み)

つまり、個人事業主用の銀行口座については、私的利用の銀行口座とは別の銀行にビジネス用の個人名義口座を新しく作り、そこを利用すれば、税務処理上も全く問題ないということです。

以上のことから、個人事業主にとっては、ビジネス用の銀行印も、個人用の銀行印も、今後はますます必要がなくなっていくと考えられます。

ビジネス用の角印こそ最も出番が多い

ここまでは、屋号用の丸印、銀行印が不要である理由を見てきましたが、これから説明する角印については、必要となる個人事業主が多いと思います。

なぜなら、個人事業主がビジネス用として実務上、見積書や納品書、発注書、領収書などで、最も出番が多いのが、この角印だからです。

最近では、それらの書類もネット上で管理、発行、印刷までできるサービスが出てきましたが、ネット上ではなく、対面で押印が必要になる店舗の場合などは、角印は必須になるかと思います。

kaku

実際の屋号を冠した角印は上のような印鑑に。

請求書も見積書もネットの時代で「電子印鑑」が主流?

先ほど、店舗運営されている方には、角印は必須というお話を致しましたが、受託ビジネスや仕業をされている個人事業主であれば、角印も必要でない可能性は十分にあります。

例えばクラウド会計シェアNo.1の【会計ソフトfreee(フリー)】では、画像ソフトで先ほどのような「電子印鑑」を作成して、登録しておけば、ネット上から、PDFを発行したり、数百円の手数料でお客様のところへ請求書を郵送することもできますので、簡単な画像編集ができる人は、角印を購入する必要はありません。



実際に弊社では、取引先への請求書の発行、見積書の交付などは、全てネット上で処理しておりまして、せっかく購入した角印を利用したことは、ここ数年ないという状況です・・。

個人用の印鑑との併用について

続いては、個人事業主の方が迷うことも多い、「ビジネス用の印鑑と個人用の印鑑との併用」について触れておきたいと思います。

ここまで見てきた通り、個人事業主として開業を行う場合、これまで一般的に必要と言われてきた、丸印、銀行印、角印が不要というケースは少なくありません。

では、業務上必要な開業届や確定申告などで使用する「認印」は、個人の印鑑でOKなのでしょうか?

結論から申し上げますと、全く問題はありません。

むしろ、併用することで、管理する手間が省けてしまうほどです。

ただ、最近の印鑑がいくら耐久性が高いとは言え、使用頻度が多くなりますと、経年劣化が進みますので、商品寿命が短くなってしまうのは致し方ないところです。

ただ、それでも、ビジネス用と個人用の印鑑を併用する管理面での手間やコストに比べれば、断然、”楽”だと思います。

個人としての実印及び印鑑証明書の管理は厳重に

個人事業主として開業をして、印鑑を使用するのは、個人の認印でほとんどのことがカバーできますが、一方で、実印と印鑑証明書の管理については、厳重に行う必要があります。

なぜ、実印と印鑑証明書の管理がそれほど重要になるかと言いますと、端的に言えば、実印による押印と印鑑証明書が揃った契約書の効力は絶大で、仮に第3者に悪用されて、裁判で争うことになっても、それを無効にするのは、かなり困難だからです。

参考/実印と印鑑証明書が揃った契約書を無効にすることが大変な理由とは?

逆に言えば、それだけ重要な存在であるからこそ、法人同士であっても多額の金額が絡む契約には、代表者の実印による押印や印鑑証明書が求められるというわけです。

では、個人事業主として開業するにあたって、実印と印鑑証明書が求められるケースというのは、どんなケースが考えられるでしょうか?

実際には、契約書の他に、自動車の購入、事務所(賃貸)への入居、公正証書の作成といったケースがあり、決してその使用頻度は少なくないというのが現状です。

個人事業主として開業する際は、対外的にも、しっかりとした実印を作成しておきたいところですね。

スポンサーリンク

まとめ

「個人事業主・自営業者・フリーランスが開業するにあたって必要な印鑑の種類とは?」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

実際に個人事業主として活躍されている方、そして、フリーランスから法人設立へ進まれた方、そして、その現状をつぶさに見ている各種専門家の意見をもとに、お伝えすることで、“リアリティー”を感じて頂けたのではないでしょうか。

本記事が読者の方のお役に立てれば、幸いです。

最後までお読み頂きまして、誠にありがとうございました!

スポンサーリンク

【筆者プロフィール】

浅井美津子

保有資格である宅地建物取引士(免許番号:941700070)・簿記1級・販売士1級を活かし、長年にわたり、不動産、自動車などの売買契約業務から会計業務まで幅広く従事。社会問題から生活に関わる話題などについて、独自の視点で執筆活動も行っています。