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実印の書体の選び方|男性・女性のおすすめデザインについて

かつてスティーブ・ジョブズがリード大学でカリグラフィー(文字を美しく見せるための技法のこと)の授業を好んで受講していたことから、Macに複数搭載されることになったフォント。

ジョブズがその生涯を通じて推進してきた芸術的な感性とデジタル技術の融合は、グラフィックデザインや印刷物、そして、今回の記事の主題である「はんこ作りと書体」にも大きな影響を与えてきました。(職人さんの手を借りることなく、複雑な書体でも低コストで正確に機械彫りで実現することができるように。)

そんな技術革新の影響を大きく受けている現代のはんこ作りの中でも、今回は実印について、「実印の書体の選び方」と題して、男性と女性ぞれぞれ、おすすめの書体のデザインを見ていきたいと思います。

日本人の文字文化と書体

ご存じの通り、日本は中国から漢字を輸入して独自の書体を考案したり、そして、カタカナやひらがなを生むなど、日本独自の「文字文化」を築き上げてきました。

その独自性は今なお発展を続けておりまして、例えば、今や世界で当たり前のように利用されている下記のような記号、これは実は日本人が開発したものだったんです。

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これらの記号はピクトグラムと呼ばれているもので、日本人の勝見勝さん達の手により、東京オリンピックの時にはじめて開発されたものです。(参考/wikipedia-ピクトグラム-)

また、最近ではLINEのスタンプや携帯電話の「絵文字」などのような文字文化も生まれ、日本の文字文化は独自の発展を遂げ続けています。

なぜ、印鑑作りの書体の話をする前に筆者がこうした話をしたのかと言いますと、日本人は「文字」に対して色々な価値観(効率性や実用性、美しさなど)を込めることに長けていて、そして、その感性は実印を作るときの書体のデザインの選び方という観点でも生かされているということを説明したかったのです。

印鑑としての書体の種類

では、実際に現在のはんこ屋さんで使用されている書体にはどんな種類があり、一般的にはどういったポイントで、書体が選ばれているのかということを見ていきたいと思います。

下は「大和撫子」の文字で、実際に印鑑をネット上でプレビューしたものになりまして、左から実印に選ばれやすい順に並べたものになります。(参考/印鑑無料プレビューができるネット通販のはんこ屋さん「はんこプレミアム」や「ハンコマン」)

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中国起源の漢字という文字体系のもとにある書体には大きく分けて篆書・隷書・楷書・行書・草書の5種類がありまして、現在の日本のはんこ屋さんで実印を作るときに選べる文字としてその中から、「篆書・隷書・楷書・行書」の4つが利用されています。

それに加えて、日本独自のはんこ用の書体として、「古印体」と「印相体」が使用されています。(「古印体」のルーツは大和古印と呼ばれている奈良時代の寺社印とのこと。-参考/シャチハタ古印体– )

実印の書体の選び方

では続いて、実印の書体を選ぶポイントを見ていきたいと思います。

〇実印は可読性が低いものを選ぶ

通常、文章を読んだり書いたりするときは、他の人が読みやすいものを・・・ということを小さな頃から読者の方も色々な人に教えてこられてきたことと思います。

しかし、実印の場合は”ある理由”からあえて、可読性が低い=つまり読みにくい書体を選択することが一般的に多くあります。(篆書体や印相体など)

その理由とは、複製=コピー防止です。

実印を使う場面というのは、マイホームの購入や自動車の購入、公正証書の作成、相続のときなど、多額の金銭が絡む取引で使うことが多いのが特徴で、契約書などに押印する印鑑が、紛れもなく本人の意思を持って押された「オリジナルの印鑑」であることを意味しています。

つまり、そんな大切な印鑑である実印が簡単に複製できてしまうような書体だとすると、万が一のことがあると、勝手に自分の土地が売られたり、借用書を作成されたり大きな”リスク”を抱え込むことになってしまうのです。

そんな大袈裟な・・・という方がいるかもしれませんが、残念ながら、実印と印鑑証明書を悪用した事件は毎年のように起きているのが現実です・・・。

実印の書体の選び方としてセキュリティ上の理由からあえて読みにくい書体を選ぶということが、複製されるリスクを軽減しているということになります。

実印の役割について、詳しく知りたいという方は、「実印ってそもそも何?登録方法から使い方まで徹底解説!」の記事も参考にして頂ければと思います。

〇可読性が低すぎるのもリスク

「じゃあ、実印の書体を選ぶときは、読みにくい書体を選べってことね!」という方もいらしゃるかもしれませんが、ただ、あまりに”崩しすぎた”書体の場合は、実印を登録する市区町村の役所で登録できないケースもあったりします。

本人の印鑑であるかどうかという観点とは別に、そもそも文字が読めないという理由からです。

ですので、安全上の理由とは言え、近くのはんこ屋さんなどで、「とにかく名前が分からないぐらい、文字を崩してください!」なんていう注文はやめておいた方が無難です。(まさか、そんな注文をする人はいないとは思いますが・・^^;)

通常、こういった知識は、はんこ屋さんも当たり前のように持ち合わせていますので、一般的な篆書体や印相体などをおすすめしてくるかと思います。

〇女性用の実印の書体について

女性用の実印の書体としては、「篆書体」を推奨するはんこ屋さんが一般的に多く見られます。

あたたかみと優しさを感じさせる丸みを帯びた曲線、柔軟性と伝統を感じさせるデザイン、装飾的な見た目などが女性らしさを表現するのにぴったりの書体と言えます。

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なお、書体とは別に、実印作成のときに、「縦書き」「横書き」を選択できるはんこ屋さんもあります。

「縦書き」と「横書き」、それぞれどちらを選択されても結構です。

日本の書物の多くは縦書きですが、契約書には横書きのものも多くありますので、書面に合わせるというバランスを考えるのであれば、横書きの方がいいのかもしれませんが、それだけで横書きを選択する理由にはならないかと思います。

実際、筆者を含めて、当サイトの編集部は、様々な契約書を通じて、多くの方の実印を目にしてきましたが、「縦書き」と「横書き」、どちらもありました。

なお、運気や開運、縁起、風水といったことを基準にして縦書き、横書きを選ぶ方もいらっしゃいます。

そうした価値観で選択されることも「尊重されるべき」価値観だと筆者は思っています。

〇男性用の実印の書体について

女性用の実印の書体としては、印相体(篆書体も)を推奨するはんこ屋さんが一般的に多く見られます。

太くうねりのある筆圧が印象的で、勢いよく流れるような力強さと重厚感を感じます。男性らしさを表現するのにぴったりの書体と言えます。

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縦書きと横書きについては、女性同様、個人の好みで特にどちらでも問題はありません。

実印は文字に掛かるように押印

最後に、実印の押し方について触れておきたいと思います。

篆書体や印相体が複製されにくい書体とは言え、現代の技術では紙に押された印影から、押された印鑑を複製するということは決して難しくありません。

複製されることを防ぐためにも、下記のように必ず、署名あるいは記名の最後の一文字の上に重なるように押しましょう。

実印を押す位置

※なお、裁判などで係争になった場合、印影の正当性を確認する必要がありますので、文字に重なりすぎるような捺印/押印は避けましょう。

まとめ

「実印の書体の選び方|男性・女性のおすすめデザインについて」と題してお送りしてきましたが、いかがでしたでしょうか。

今回の記事が、実印の書体選びのヒントになれば、幸いです。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!

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【筆者プロフィール】

浅井美津子

保有資格である宅地建物取引士(免許番号:941700070)・簿記1級・販売士1級を活かし、長年にわたり、不動産、自動車などの売買契約業務から会計業務まで幅広く従事。社会問題から生活に関わる話題などについて、独自の視点で執筆活動も行っています。