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賃貸住宅に引っ越しするときに本人や連帯保証人の印鑑証明書が必要な理由

毎年、春先になると入学、入社などの理由で引っ越しされる方から寄せられる問い合わせとして、賃貸住宅と印鑑証明書に関する質問がよくあります。

そこで、今回は、賃貸住宅を提供している会社が印鑑証明書の提出を求める理由それに対してのトラブル予防策について説明してみたいと思います。

説明に入る前に、これまで寄せられた問い合わせから、幾つかピックアップして紹介します。(問い合わせを頂いた方からの了承を得た上で、内容を一部、修正・編集しております。)

「今度、大学入学のため、東京に引っ越しをすることになりました。賃貸住宅の契約をしたのですが、身元保証人として、親の実印による押印と印鑑登録証明書が必要と言われました・・。不動産会社がそこまでするのはなぜですか?」

「なぜ、賃貸住宅に住むにあたって、連帯保証人の署名捺印と印鑑証明書の添付が必要なのですか?」

「今年の春から就職する会社の近くで小さな不動産屋と賃貸マンションの契約をしました。印鑑証明書が必要と言われました・・・。はじめてのことで戸惑っています・・・。大丈夫でしょうか?」

などなど、賃貸マンションや貸し家に引っ越すだけなのに、本人や連帯保証人の実印と印鑑証明書を求められることについての不安・心配という声があるようです。

では、早速、見ていきましょう。

まずは、賃貸住宅を提供している会社側の理由から見ていきたいと思います。

賃貸住宅を提供している会社には、様々な家主がいますが、賃貸住宅はその名の通り、”一時的に”住宅を貸している会社です。分譲住宅のように、販売契約が終われば、関係が終了というものではありません。

つまり、貸し出している間もリスクがあります。例えば、リスクには、下記のようなリスクがあります。

賃料、更新料、共益費の未払いリスクと連帯保証人

どんな賃貸住宅であっても、家賃、更新料、共益費など、賃貸住宅を貸し出している会社は、毎月あるいは毎年、契約に定められた金額を受け取る権利があります。

しかし、仕事を変えて収入が減った・・・、離婚で収入が減った・・・といった個人的な理由で賃料や更新料、共益費を払えないといったケースは決して少なくありません。

そして、それが1ヶ月や2ヶ月であれば、それほどの金額にならないかもしれませんが、積もりに積もって、6ヶ月分が未払いとなると、金額もそれなりの金額になったりします。例えば、家賃が5万円でも6ヶ月滞納すると30万円になります。家賃5万円の住人にしてみると、決して安くない金額ではないでしょうか。

そこで、賃貸住宅を提供している会社は、賃料などの未払いリスクを担保するために、連帯保証人を求めるというわけです。

そして、さらに連帯保証人についても、確実に本人であることを証明するために、実印による捺印と連帯保証人自筆の署名、そして、その実印を証明するための印鑑証明書の添付を求めます。

言い換えれば、賃貸住宅を提供している会社が連帯保証人の印鑑証明書を求める理由は、連帯保証人の”なりすまし”を防ぐためです。

居住者が賃料などを支払えない→連帯保証人へ支払いを要請→連帯保証人がなりすましで賃料などを回収できない・・・となるのを未然に防ぎたいというわけです。

損害賠償リスクと印鑑証明書の提出

火災や地震については、賃貸住宅を提供している会社が加入している保険あるいは、賃貸住宅に居住している本人が契約した保険でカバーをするのが一般的だと思います。

しかし、居住者の過失や意思によって、壁を破壊した・・・。据え付けの家具が破損した・・。ガラスが割れた・・・。などなど、賃貸住宅も保険だけではカバーできない家屋の損害リスクがあります。(仮にカバーしようとすると保険料の支払いがその分、高くなります。)

そうした損傷があり、そして仮に居住者が逃げ出した場合の損害賠償は、当然ですが、賃貸住宅を提供している会社が居住者に対して請求する権利があります。

しかし、逃げ出した居住者が”なりすまし”だったら、どうなるでしょうか?場合によっては、部屋の損害を修理するための費用も入ってこない上に、少なくとも修理が完了するまでの期間は、借り手の受け入れができないために、賃料も入ってこないという状況が続きます。

そうした状況に陥らないために、借り手である本人が本当にその人であるということを証明するために、署名捺印(実印)と印鑑証明書の提出を求めて、本人確認の徹底を行うということが会社側としては重要になります。

不正利用のリスク

迷惑防止条例など、法令順守が求められる現在の日本において、反社会的勢力や狂信的な宗教団体などの存在は、賃貸住宅そのものの存在を脅かす存在です。

例えば、一度、そうした風評が出てしまうと、今はネットでのコミュニティやSNSなどに”残って”しまいますので、賃貸住宅のイメージが悪化→収益性の低下ということになりかねません・・。

そうした不正利用のリスクを排除するのは、容易なことではありませんが、賃貸の契約時に身分を偽って契約されてしまってからでは遅いので、先に印鑑証明書などの提出による本人確認の徹底を行うことが重要となります。

他にも様々なリスクがありますが、代表的なリスクとして、上記3つを挙げてみました。

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では、次に実印を押して、印鑑証明書を提出する側のトラブル予防策について見ていきましょう。

悪用防止とトラブル予防策

実印と印鑑証明書は例えば、公正証書の作成などに使用されますが、公正証書は裁判所の執行命令に相当する力を持っていまして、場合によっては、遺言よりも効力が強い文書になり得る存在として知られています。

そんな公正証書の作成に悪用されてしまうのは大変なリスクです。そこで、悪用防止のためのトラブル予防策を説明したいと思います。

まず、実印の押し方ですが、最新の技術では印影から、印鑑を複製するということは簡単にできてしまいますので、下記のように必ず、署名あるいは記名の上に重なるように押します。(捺印(なついん)と押印(おういん)の違いについてはこちら)

実印を押す位置

そして、実印、印鑑証明書、印鑑登録カードそれぞれを厳重に管理します。

・実印は鍵付き収納(できれば、金庫)

・印鑑証明書は余分に発行しない

・印鑑登録カードと実印は別々に保管

などがあります。

さらに徹底する場合は、

・実印の登録を抹消する

といった方法も考えられます。実印や印鑑証明が求められるケースは、多額の金銭取引などが絡む取引が多いことから、それほど日常的には多くありません。そこで、実印の登録そのものを契約終了後に抹消してしまうという手もあります。

悪用防止策についてもっと詳しく読みたい方は、印鑑証明書の悪用防止策についてからどうぞ。

まとめ

「賃貸住宅に引っ越しするときに本人や連帯保証人の印鑑証明が必要な理由」と題して、記事をまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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【筆者プロフィール】

浅井美津子

保有資格である宅地建物取引士(免許番号:941700070)・簿記1級・販売士1級を活かし、長年にわたり、不動産、自動車などの売買契約業務から会計業務まで幅広く従事。社会問題から生活に関わる話題などについて、独自の視点で執筆活動も行っています。